高炉スラグ(徐冷、水砕)

高炉スラグは、銑鉄を製造する高炉で溶融された鉄鉱石の鉄以外の成分と、副原料の石灰石やコークス中の灰分が一緒に分離回収されるもので、銑鉄1tあたり300kg生成します。高炉から取り出されたスラグは、約1,500℃の溶融状態にあり、その冷却方法によって異なった性状の徐冷スラグと水砕スラグに分類されます。

高炉

01. 徐冷スラグ

溶融スラグを冷却ヤードに流し込み、自然放冷と適度の散水により徐冷処理することで、結晶質の岩石状の徐冷スラグとなります。

02. 水砕スラグ

溶融スラグに加圧水を噴射して急激な冷却処理することにより、ガラス質で粒状の水砕スラグとなります。

製鋼スラグ(転炉系、電気炉系)

製鋼スラグは、銑鉄やスクラップから成分を調整し、靱性・加工性に優れた「鋼」を製造する製鋼工程で生成します。製鋼スラグには、転炉から生成する転炉系スラグと、スクラップを原料とする電気炉製鋼工程で生成する電気炉系スラグがあります。
転炉系スラグは、高炉徐冷スラグと同様に冷却ヤードで放冷や散水により徐冷処理された後、加工され各種用途に利用されています。転炉鋼1tあたり約130kg生成します。近年では転炉精錬の前工程でリン(P)や硫黄(S)を除去する溶銑予備処理が普及し、ここで生成するスラグも転炉系スラグに分類されます。

製鋼スラグ(転炉系)

電気炉系スラグは、鉄スクラップを溶解・精錬する際に生成し、酸化精錬で発生する酸化スラグと還元精錬で発生する還元スラグがあります。1980年代頃までは、一つの電気炉内で両精錬が行われており、両スラグを分離することが困難でした。その後、取鍋精錬炉が広く導入され、両精錬工程が明確に区別されるようになり、両スラグを分離して取り出すことができるようになりました。現在では、電気炉酸化スラグは電気炉鋼1tあたり約70kg、還元スラグが約40kg生成します。

転炉
電気炉

鉄鋼スラグの特性と用途

01. 高炉徐冷スラグ

水と反応して固まり、時間とともに強度が向上する水硬性を有しているため、土木構造体として大きな支持力が期待できることから砂利と同様に路盤材に使用されています。アルカリシリカ反応を生じる恐れがなく、さらに粘土・有機不純物を含まないので天然骨材と同様にコンクリート用骨材としても利用されています。

02. 高炉水砕スラグ

高炉徐冷スラグ同様、水硬性があり、アルカリシリカ反応を生じる恐れがありません。潜在水硬性を有しており、微粉砕によって潜在水硬性が大きく活性化することから、高炉セメントなどに使用されています。高炉スラグ微粉末は、セメントを半分程度混合することで普通セメント(ポルトランドセメント)と遜色のない性能を持つ高炉セメントとなり、長期間にわたり強度が増進されます。水との反応時の発熱速度が遅い、化学的な耐久性が高い、などの特性を活かし、港湾などの大型土木工事をはじめ幅広く使われています。

03. 製鋼スラグ

水硬性があり土木構造体として大きな支持力が期待できることから、路盤材として用いられます。粒子密度と硬度が高く耐磨耗性に優れていることから、アスファルトコンクリート用骨材に使用されています。また、せん断抵抗角が大きく粒子密度と単位体積重量が大きいことから、土工用材・地盤改良材(サンドコンパクションパイル用材)としても使用されています。

鉄鋼スラグの主な特性と用途

鉄鋼スラグの主な特性とその用途を示す詳細表。左側には成分名が、右側にはそれぞれの特性と用途が記載されています。
※アルカリシリカ反応:セメント中のアルカリにより骨材が膨張する反応。コンクリート構造物のひび割れや崩壊を招く場合がある。
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