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地盤改良

周辺海域への影響を実証

鐵鋼スラグ協会は、1993年度から(財)沿岸技術研究センターと共同で製鋼スラグの港湾工事用材料としての適用技術の研究に着手し、2000年に「港湾工事用製鋼スラグ利用手引書」を作成、2015年2月には、(財)沿岸技術研究センターより「港湾・空港・津波等における製鋼スラグ利用技術マニュアル」が発刊されています。
この研究では、物理特性だけでなく、神戸ポートアイランドで陸上サンドコンパクションパイル(SCP)、広島港で海上SCPの試験工事を行い、海域に与える影響を調査しました。SCPとは、軟弱地盤中に締め固めた砂の抗を打ち込むことで地盤の強度を上げる地盤改良工法です。地盤改良用製鋼スラグは、天然の砂に比べて単位体積重量とせん断抵抗角が大きいという土質工学的特性を活かし、地盤改良工事の工費低減を可能とすることがわかりました。
また、製鋼スラグの適用による海域への環境影響については、製銅スラグからの溶出水のpH は通常高い値を示すものの、SCP中詰材として利用した場合にはケーシングパイプ中に封じ込められて施工され、海水と直接接触することがほとんどないため周辺海域のpHの上昇はほとんどないことが確認されています。
SCP材料に天然砂の代替として製鋼スラグが利用可能と評価されたことで、各地の港湾で利用されました。特に、瀬戸内海などでは、自然保護の観点から海砂採取を禁止する自治体が増えたこともあり、SCP中詰材として地盤改良用製鋼スラグは急速に普及することとなりました。

地盤改良用製鋼スラグの特徴

  • 形状は稜角に富み、表面は粗で、天然の砕石や砂に類似
  • 粒子密度は 3.2~3.7g/cm3 と天然石材と比べて大きく、単位体積質量も湿潤重量(含水比5%)で 19~26kN/m3、水中で 14~16kN/m3 と重い
  • せん断抵抗角 40°以上

広島県大竹港東栄地区 多目的国際ターミナル岸壁(-11m)整備

広島県の大竹港東栄地区洋上桟橋工区の多目的国際ターミナル岸壁(-11m)の整備では、重力式岸壁下の沖積粘土層約20m厚の地盤改良において、製鋼スラグを中詰材としたSCP工法(改良率70%)が採用されました。その結果、約5%のコスト縮減が図られるとともに、周辺海域への環境影響を考慮し、工事期間中は環境影響、使用材料については溶出量や防止試験を行い、全て基準値をクリアしていることが確認できました。

海上SCP施工状況
大竹湾東栄地区岸壁全景(広島湾再生プロジェクトHP)
大竹湾東栄地区岸壁断面
SCP平面配置

液状化対策としての利用 — 名古屋港鍋田ふ頭岸壁 —

陸上におけるSCP工法での利用事例として、2009年名古屋港鍋田ふ頭岸壁(-12m)地盤改良工事に採用されました。従来の天然砂を用いた場合と同等の地盤特性で材料が安価であることから、全体で約10%のコスト縮減に寄与しました。
※「財団法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構『公共事業コスト構造改革プログラム』施策名:II 計画・設計・施工の最適化【2】施工の見直し施策 11)使用材料の変更によるコスト改善」より

陸上SCP施工状況
製鋼スラグSCP施工断面の一例
鍋田埠頭SCP配置図
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