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セメント

コンクリート構造物の耐久性を向上

鉄鋼スラグ製品は現在、その特性を活かし、各方面で利用されていますが、その最大の需要分野はセメントです。鉄鋼スラグ製品の約50%、高炉スラグだけで見ると約70%がセメント原料に使われています。
高炉セメントを使用したコンクリートは、普通セメントを使用したものに比べて長期強度が大きい特長を持っており、多方面の用途に使われています。さらに優れた特性として、アルカリ骨材反応の抑制効果、海水や化学物質に対する耐久性が高い、塩素イオンによる鉄筋の腐食が少ない、発熱速度が小さい、環境への負荷が少ないなどが挙げられます。

高炉セメントは、セメント輸送専用車や袋詰めをして出荷

高炉セメントはこれらの特性が高く評価され、護岸やダムなどの海洋・河川構造物、道路・鉄道構造物、各種土木、建築基礎、地盤改良工事などに使われており、国土交通省・農林水産省の直轄土木工事では、セメント、生コンとして90%以上の使用実績があります。これはグリーン購入法の特定調達品目への指定、公共工事仕様書への記載が大きな要因となっています。
また、最近では、建築工事での使用も増加しています。杭や基礎、地中梁、連続壁などは、一般に部材断面が大きいこと、コンクリートの養生期間が取りやすいこと、かぶり厚さが比較的大きいことから、高炉セメントの使用が適しています。東京都建築物環境計画書制度や各自治体で実施されている CASBEE(建築環境総合性能評価システム※)では、大型の建築工事への高炉セメントの使用が推奨されています。東京都では同制度が2002年度から始まり、これまでに対象となる特定建築物の30%に高炉セメントが採用されました。

高炉セメントが使用された構造物

小山ダム(茨城県)
明石海峡大橋

※ CASBEE(Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency、建築物総合環境性能評価システム):2001年、国土交通省の主導のもとに、(一財)住宅・建築SDGs 推進センター内に設置された委員会で開発された、省エネルギー、省資源など環境負荷削減に加え、室内の快適性、景観など環境品質・性能の向上も含めた、建築物の環境性能を総合的に評価するシステム。

CO2の発生量を低減

日本のセメント産業は、温室効果ガスの総排出量の約4%に相当するCO2を排出しています。この多くは、セメントの中間製品であるクリンカを製造する過程で、石灰石を焼成することにより発生します。高炉セメントは、普通セメントに高炉スラグ微粉末を多量に混合させるため、クリンカの構成比を大幅に引き下げることによって、CO2の削減ができます。
政府は地球環境目標対策として、高炉セメントを拡大するため、経済産業省が「混合セメントの普及拡大方策」を検討するともに、2021年10月に閣議決定された「2030年温室効果ガス削減目標」の計画に「混合セメントの利用拡大」が施策の一つに織り込まれています。

高炉セメントによるCO2削減効果(年間推計値との比較)

高炉セメントの生産による年間CO2削減量はおよそ360万tです。この数字は秋田県内の森林(84万ha)によるCO2吸収量(342万t)や、愛知県内の戸建住宅(156万戸)に太陽光発電を設置した場合のCO2削減量(259万t)と同等の量です。
新国立競技場(2019年)
東京都庁舎(1990年)
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