鉄鋼スラグの化学組成

鉄鋼スラグは石灰(CaO)とシリカ(SiO2)を主成分としています。そのほかの成分として、高炉スラグはアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)と少量の硫黄(S)を含み、製鋼スラグは酸化鉄(FeO)、マグネシア(MgO)を含有しています。製鋼スラグの場合、多くの金属元素は酸化物の形でスラグ中に取り込まれています。精錬時間が短く石灰石含有量が高いため、副原料の石灰の一部が未溶解のまま遊離石灰(free-CaO)として残るものもあります。
これらの成分は、地殻や天然岩石、鉱物など自然界に存在するものであり、化学組成は普通ポルトランドセメントに類似しています。鉄鋼スラグの形状や物理的特性は、一般の砕石または砂と似ていますが、化学成分や冷却プロセスの違いにより、スラグ特有の幅広い性質を持たせることができます。例えば、アルカリ刺激があると硬化する特性を持つものなど、その物理的・化学的特性に応じた用途が開発され、多方面で利用されています。

鉄鋼スラグの組成例

(単位:mass%)

環境基準への適合

鉄鋼スラグ製品の環境安全品質

鉄鋼スラグ製品は、1979年に物理的性状を中心とした道路用JISが制定され、それ以降も種々の土木材料としての品質規格が策定され、土木資材として使用されてきました。一方、環境安全品質についてはその規格化が遅れていましたが、環境安全品質試験方法として「スラグ類の化学物質試験方法(JIS K 0058-1,2)」が2005年に制定されたことを受け、鐵鋼スラグ協会では、鉄鋼スラグ製品のJIS規格への環境安全品質の織り込みに取り組んでいます。
鉄鋼スラグ製品の環境安全品質は、製品使用時の暴露環境を考慮して、その環境における土壌、地下水、海水等が環境基準等を満足するよう規定するものです。「道路用鉄鋼スラグ(JIS A 5015)」および「コンクリート用スラグ骨材(JIS A 5011-1,-4)」のJIS規格は、2013年の改正において、環境安全品質の織り込みが終了しました。さらに、2015年1月に改正した「鉄鋼スラグ製品の管理に関するガイドライン」において、使用場所・用途に応じて適用する環境安全品質をより明確にして整理しています。

道路用鉄鋼スラグ(JIS A 5015)の環境安全品質基準

項目 溶出量(mg/L) 含有量(mg/kg)
カドミウム 0.01 以下 150 以下
0.01 以下 150 以下
六価クロム 0.05 以下 250 以下
ひ素 0.01 以下 150 以下
水銀 0.0005 以下 15 以下
セレン 0.01 以下 150 以下
ふっ素 0.8 以下 4,000 以下
ほう素 1 以下 4,000 以下
※ここでいう含有量とは、同語が一般的に意味する"全含有量"とは異なりますのでご注意ください。

コンクリート用スラグ骨材(JIS A 5011-1,-4)の環境安全品質基準

※ここでいう含有量とは、同語が一般的に意味する"全含有量"とは異なりますのでご注意ください。

使用場所・用途に応じて適用する環境安全品質

陸域で使用される鉄鋼スラグ製品については、道路・鉄道用、コンクリート骨材用、地盤改良材、土木・陸上工事、水和固化体、肥料用、緑、その他の7種に分類し、JIS規格品又はJIS規格相当品、土壌と区分可能な用途か否か等によって、適用される環境安全品質の試験方法と判定基準値、試験規程を定めています。
一方、港湾・海域に使用される鉄鋼スラグ製品についても、コンクリート骨材用、地盤改良材、港湾・海域工事、水和固化体の4種に分類し、JIS規格品又は相当品、港湾用途溶出量基準や水底土砂基準が適用されるか否か等によって、適用される環境安全品質の試験方法と判定基準値、試験規程を定めています。

スラグ類の化学物質試験方法(JIS K 0058-1)による鉄鋼スラグ製品の溶出試験結果例

(単位:mg/L)
※< は、分析の定量下限値未満を示します。

土壌環境基準(環告46号)による鉄鋼スラグ製品の溶出試験結果例

(単位:mg/L)
※< は、分析の定量下限値未満を示します。

水底土砂基準(環告14号)による鉄鋼スラグ製品の溶出試験結果例

(単位:mg/L)
※< は、分析の定量下限値未満を示します。
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