低炭素社会への貢献


ECM(エネルギー・CO2ミニマム)
セメント・コンクリートシステム
国内で排出される温室効果ガスの総排出量の約4%はセメント産業に由来すると言われており、その大半はポルトランドセメントの中間製品であるクリンカを製造する過程で、石灰石を焼成することにより発生しています。
そこで、コンクリート工事全体の環境負荷を小さくするために、ポルトランドセメントを環境負荷の小さい高炉スラグ微粉末やフライアッシュに置き換えることでセメント製造時のクリンカの構成比を大幅に引き下げ、セメント製造時のエネルギー消費量を削減する試みが各方面で行われています。ここで紹介するECMセメント・コンクリートシステムもその一つであり、このような建設業における環境対策としての混和材利用の取り組みは、(一社)日本建設業連合会の「低炭素型コンクリートの普及促進に向けて」(※1)というパンフレットにまとめられています。
ECMセメント・コンクリートシステムとは、セメント中に60~70%程度混合させる高炉スラグ微粉末を水和反応の主材とするECM(エネルギー・CO2ミニマム)セメントを用いてコンクリートを製造、施工するシステムです。従来は、このような高炉スラグ微粉末を高い比率で含有するセメントを使用した場合、施工と品質上の課題がありました。そこで、ECMセメント・コンクリートシステムの開発では、高炉スラグ微粉末を単純に混合するだけではなく、化学成分の調整や粒度構成の研究、混和剤の適正化といったセメント技術の開発と、これを使う建設技術の開発を融合させ、コンクリートの製造・施工システム全体として課題の解決を行うべく、NEDOの補助事業として産学の共同研究チーム(※2)による課題解決に取り組みました。これにより、セメント生産におけるエネルギー消費量と二酸化炭素(CO2)排出量を従来のセメントよりも6割以上削減することに成功しました。
また、ECMセメントシステムは、エネルギー・CO2削減以外にも、以下のような特長が挙げられ、これらの特長を活かして建築の地下躯体や土木構造物、地盤改良材などへ適用が図られています。
(※1)http://www.nikkenren.com/publication/detail.html?ci=237 (一社)日本建設業連合会 環境委員会会報、2016年4月
(※2)東京工業大学、(株)竹中工務店、鹿島建設(株)、(株)デイ・シイ、日鉄住金高炉セメント(株)(現:日鉄高炉セメント(株))、太平洋セメント(株)、日鉄住金セメント(株)(現:日鉄セメント(株))および竹本油脂(株)
ECMセメントによる想定されるCO2排出削減量

- 1.水和反応が小さく従来の高炉セメントよりも低発熱であるため、温度ひび割れ抵抗性に優れる
- 2.コンクリートの乾燥収縮が小さく、収縮ひび割れの抑制に効果がある
- 3.塩化物や硫酸などに対する化学抵抗性が高いため、海水の影響を受ける地域や災害防止剤を使用する構造物などに適している
以上から、ECMセメント・コンクリートシステムは、「環境にやさしい」技術として、国土技術研究センターの国土技術開発賞をはじめとするいくつかの賞を受賞しており、今後もますます、その普及の拡大が期待されている。