スラグの種類

スラグは、鉱石から金属を還元・精錬する際などに、特定の成分が溶融・分離してできたものです。スラグは本来金属製造工程起源のものを表す言葉ですが、近年では、ごみなどを焼却施設で処分した時に発生する廃棄物加熱溶融起源のものもスラグと呼ばれます。さらに、金属製造工程起源のスラグは鉄鋼スラグと非鉄金属スラグに分けられ、鉄鋼スラグは、鉄鋼製品の製造工程で生まれたものを指します。鉄鋼スラグは、鉄鉱石から鋼を作り出す還元・精錬段階で生まれるシリカ(SiO2)などの鉄以外の成分が、石灰(CaO)と溶解・結合した副産物であり、省エネルギー・省資源、CO2削減を可能にする「地球にやさしい資材」として利用されています。

スラグの種類と使用される場所を表した図

鉄鋼スラグができるまで

製鉄の副原料「石灰石」がルーツ

一見製鉄とは関係がないように思われる石灰石は、製鉄プロセスにおいて必要不可欠な副原料です。
従来から日本の鉄鋼業が使用する石灰石は日本国内で採掘されてきました。太平洋上の海洋プレートにあったサンゴ礁、石灰岩などがプレート移動で日本列島の海溝に潜り込む際に、日本列島各地の地盤に付加されたもので、現在でも豊富な埋蔵量を誇ります。広い海洋で生まれた不純物の少ない日本の石灰石は、その品質の高さから、海外にも輸出されています。
鉄鉱石を還元する際には、それに含まれるシリカやアルミナ(Al2O3)などの他成分を取り除くために石灰石を加えます。石灰石は他成分と一緒になることで、融点の低い溶融体を形成し、鉄と分離・回収しやすくなります。この回収物が鉄鋼スラグとなります。

石灰石

鉄鋼スラグが生まれる過程

鉄鋼スラグは、高炉で鉄鉱石を溶融・還元する際に生成する高炉スラグと、鉄を精錬する製鋼段階で生成する製鋼スラグに大別できます。
高炉スラグは、鉄鉱石に含まれるシリカなどの鉄以外の成分や還元材として使われるコークスの灰分が、副原料の石灰石と結合したものです。溶融状態での高炉スラグは、銑鉄の上部に浮かび上がるため、容易に分離・回収できます。この高炉スラグは銑鉄1tあたり約300kg生成します。高炉から取り出されたスラグは約1,500℃の溶融状態ですが、冷却方法によって異なる特徴を持ったスラグになります。
製鋼スラグは、高炉で生まれた銑鉄を、靭性、加工性の高い「鋼」にする製鋼工程で生成します。製鋼スラグには、石灰などの副原料を加えて酸素を吹き込み、銑鉄に含まれる炭素やリン、硫黄などを取り除く精錬をするときに生成する転炉系製鋼スラグと、鉄スクラップを溶融・精錬するときに生成する電炉系製鋼スラグがあります。製鋼スラグは粗鋼1tあたり約120kg生成します。

鉄鋼スラグ製品の製造フロー

鉄鋼スラグ製品の製造フローチャート。様々なプロセスを通じてスラグがどのように生成されるかを示しています。
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