土木構造物

土木分野における新たな取り組み

土木工事における高炉セメントの使用事例

高炉セメントは、1)耐海水性や化学抵抗性が大きく、塩化物イオンの拡散係数が小さい、2)アルカリシリカ反応の抑制効果がある、といった特長があるため、様々な自然環境に直接、暴露される土木構造物に多用されてきました。
一般的に、発注する官公庁の共通仕様書・特記仕様書等では、セメントの特性やコンクリートの要求性能を考慮し、以下のような使い分けがされています。

セメント種類別適用工種の例

土木学会コンクリート標準示方書(設計編)耐久性確保に関する新たな取り組み

2017年に改定された設計編では、「2章.耐久設計の基本」が新たに導入され、耐久性の確保には、適切な材料を選定する事の重要性が示されました。

2章 耐久設計の基本

  1. 構造物の重要度、維持管理区分を考慮し、ライフサイクルコストの観点から経済性を考慮して、耐久性を満足するように設計しなければならない。
  2. 設計において、構造物が置かれる環境、施工条件、使用材料を十分に把握しなければならない。
  3. 設計において、構造物の耐久性を満足する使用材料の特性と構造詳細を定めなければならない。
  4. 環境作用に応じた適切な材料を選定し、耐久性確保のため確実な施工が行えるように配慮しながら、設計しなければならない。
  5. 設計において、設計段階で想定する維持管理計画を策定し、維持管理作業に引継ぐのが良い。

東北地方整備局におけるRC床板への高炉セメント活用事例

こうした取り組みを受け、橋梁上部工に高炉セメントを適用した事例を紹介します。上記適用工種の表に示す様に、これまで橋梁上部工の施工は、初期強度発現の観点から普通セメントや早強セメントの使用が一般的でした。
一方、東北地方整備局では凍結防止材散布による塩害で床版の早期劣化が顕在化していたことから、各種施工試験を重ね「東北地方におけるRC床版の耐久性確保の手引き(案)」を制定しました。ここでは、塩害やアリカリ骨材反応抑制の観点から混合セメントの活用に加え、以下の配合条件を採用することで、寒冷地における高耐久性RC床板の施工を実現しています。

配合条件

  1. 凍害対策ではAE剤を用いて、凍害に有効なエントレインドエアを確保するものとし、融雪剤の散布量に応じて空気量を4.5~6.0%の範囲で調整する。
  2. 塩分環境下のASRを防止するため、高炉セメントB種、または普通セメントにフライッシュを混入したものを用いなければならない。なお、フライアッシュを混入する場合は、セメント量一定のもと、20%程度の混和材として 使用することを基本とする。
  3. 床版コンクリートの緻密性を確保するため、水結合材比(W/B)を45%程度とする。
  4. 床版のひび割れ抑制対策として膨張材を用いることを標準とする