データで見る鉄鋼スラグ

鉄鋼スラグ需給概要

鉄鋼スラグの年間生産量は、近年3,500万t程度で推移し、過去40年間の総外販量は約12.5億tにのぼっています。鉄鋼スラグの生産量は鉄鋼生産量にリンクしています。日本鉄鋼業は、2019年後半以降の世界経済の鈍化に加え、2020年は新型コロナ感染拡大に伴う影響から、鉄鋼生産が急激に落ち込んだため、鉄鋼スラグ生産量も大幅に減少しました。その後は経済活動が持ち直してきたことから、鉄鋼生産も穏やかながら回復傾向にあり、これに伴い鉄鋼スラグ生産も増加基調にあります。

鉄鋼スラグは、高度成長期に製鉄所関連の土木工事用資材として大量に使用されたほか、一般道の路盤材としての利用も始まりました。第二次オイルショック以降は省資源・省エネルギー・環境保全などのニーズに応えて多様な製品が生み出され幅広い用途で活用されています。例えば、鉄鋼スラグ骨材は、瀬戸内海の海砂採取規制など天然材料の減少に伴い、その代替材として大きな期待が寄せられています。製鋼スラグのせん断抵抗角が天然砂に比べ大きい特性を活用し、海底地盤の改良工法であるサンドコンパクションパイルに製鋼スラグを用いる工法が開発され、数多くの施工実績を積み重ねています。

高炉スラグ微粉末とポルトランドセメントに混合した高炉セメントは、セメント製造の焼成工程における製造エネルギーを40%以上削減するなどの省エネルギー効果、CO2排出削減効果が高く評価され、2001年のグリーン購入法の特定調達品目の指定を受けています。2030年度温室効果ガス削減目標(2013年度比46.0%)の削減施策として高炉セメント等の混合セメントの利用拡大が織り込まれています。さらに最近では、高炉セメント中の高炉スラグ比率を高め、低炭素化を志向した高炉セメントも数多く提案されています。

また、諸外国におけるセメント用原料の需要増加に対応し、セメント向け水砕スラグの輸出も拡大しています。

近年では、製鋼スラグには、アルカリ分・シリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)に加え、リン酸(P2O5)・鉄分・マンガン(MnO)等、農作物が必要とする微量元素を含有することから土づくり肥料として評価されつつあります。また、これらミネラル成分は海域環境修復に効果的との知見が得られており、環境資材としての需要が期待されています。

各種鉄鋼スラグの生産量推移

「各種鉄鋼スラグの生産量推移(2006~2021年)」を示した積み上げ棒グラフ。高炉徐冷スラグ(青)、高炉水砕スラグ(水色)、転炉系スラグ(黄)、電気炉系スラグ(赤)の推移を表示。総生成量は35,000~40,000千tの範囲で推移し、2019年以降減少傾向。
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